2008-07-01から1日間の記事一覧

ずっと、音楽ばかり考えて猛スピードで日々を送っていたので、病によって音を聞くことすらできなくなったとき、私は生きる意味を失いました。楽器にさわれないということは、私にとって即ち死を意味しました。 生きていた。 生き延びていた。 私は、誰も殺さ…

ゆっくりと

考えてみれば私は、できるはずもない幻のような自立という言葉に怯え病んでしまったのだった。 ゆっくりと大人になろう。ゆっくりと。

音楽家

「音楽をやめることはできない。君は死ぬまで音楽家だ。」 明け方 そんな言葉が頭をめぐり しろいひかりに目をこらす ずっと私は音楽家でいよう。 死ぬまで音楽家でいつづけよう。 三流だとしても、それ未満だとしても。 ゆっくりと自立してゆこう。 音楽家…

男の声は いつもやさしく穏やかで 携帯電話から耳たぶを撫でるように 私の小さな鼓膜を振動させる すずめが カラスが 鳴き始める時間に 踏切がしきりに叫びだし 始発が走り出す時間に 不眠症の私は なめらかでたまにかすれる 男の声を聴く きっと心地よい眠…

日々のくらしに

男と出会ったことで 日々のくらしに、ちょうど ちゃぽん、と小石が投げ込まれたような 変化が訪れた。 「その日にできることをやろう。」 外に出られずに家の中にいても 洗濯や料理や掃除や かんたんなことで しあわせに感じられる 男のおまじないだ。 今、…