2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

傷つける

今でも 意識から無意識へ移る瞬間に はっと、 左腕を切りつけたくなるのです。 恐ろしい衝動! もちろん 実行にうつすほどの 体力も気力も無いのですが。 刃物を 近くに置いておきたくない、 少なくともあと数ヶ月は。 これは、 オーボエ奏者にとっては致命…

春が来るというのに

どうしたら良いのか この、動かない身体を。 この、はずまない心を。 横たわる 季節など関係ないよ、と 威張るようなふりさえして 横たわる 春が、来るというのに。 やっとのことで春が、 やってくるというのに。 日光は眩しく暖かく 私の脳味噌を掻き混ぜて…

雑多な感情が 収まりがつかず 暴れ狂っている 心の中の 誰も知らない嵐 吹きすさぶ強風に 竜巻は安定した土台をも持ち上げて どこへ連れてゆかれるのか オズの国ならば困る 爪先をトントンして帰ってくる靴が無いもの 黄砂 目が痛い 涙を拭く暇もないほど 荒…

夢の話

内戦が始まっていた。 私は上下紺色のブレザーの制服で クラスごとにちりぢりばらばらに逃げ惑った。 知らぬ間に知らない学校の人たちとも一緒になった。 そんなに動いていてはだめだよ、見つかるよ、と教えられて じっと、石碑と石碑の列の間に伏せて、敵機…

空虚

恋しい という気持ちを どこかに 過去から続くこの時系列のどこかに 置いてきてしまった。 私の身体は空虚。 即ち 私は 物体。 モノでしかなく人ではない自己をどう扱うべきか、どうやって戻すべきか。 痕跡は消せないわけではない。 記憶など、幾らでも塗り…

眠れない夜に

ホットミルクを少し。 ココアの粉をかきまぜて。 君の国は 今 何時かなあ 眠れない夜に、 もはや幸せだらけになってしまった 過去の記憶(即ち、幸福な幻想!)を蘇らせるのも、 悪くはないや。 あの日々が 幻だったとしても、 悪くはないや。 マーブル模様…

自分探しについて

捜している自分とは 所詮 幻想でしかなく 虹の根元に 宝箱が埋まっているはずもない 重ねられた 幾層にも連なる 経験の 記憶 記憶も 所詮 幻想ではあるがしかし、 この 自らの中の地層を 誰にも渡すまい。 立っている。 私は ここに しずかに 二本の足で た…

誰もいない 物音ひとつしない 大きな 蓋付きの 白い紙箱に 閉じ込められた 暮らしを 想う 叫び声は吸い込まれ 見事にパッケージされた 私 という物体 赤いリボンが 頑丈に結ばれてゆく 美しさとは裏腹の 強固さ 私 を誰に贈るのですか 私 を誰が待っているの…

首が 欲しかったのだわ! かん高く嗤い舞い上がるほど 欲しかったのだわ! わたくしは 17歳でした。 首が! 首が! 首が 欲しかったのだわ! 官能的なフレーズとともに その夏は過ぎてゆきました。 首が!首が!首が! 血が!血が!血が! 唇が!唇が!唇が…

風の日

風が さわぐ わ 枯れ葉が ダンスする わ 窓ガラスに 鼻の頭をくっつけて見ているの ほら 白く くもった わ ざわざわするの ざわざわ ざわざわして ざわめきが止まらなくて どきどきして 眠れない 誰かに甘えたいわけじゃないのです。 ただ、穏やかさに 戻っ…

こたえ

なにが したいのだろう どうして それをしてるの なんのために やってるの こたえなんて でないのです すべては あなたの りょうてにつつまれている てのひらのうえで おどる おどらされる 愉しんで! いつでもあなたがそばにいるのだから こたえなんて もう…

霧女

夜更けに漂う白い霧のようなあなた 絹のドレスがひかります 月光を浴びてひかります 青白い陶器のような肌 深い藍色の瞳に吸い込まれぬよう しんと 息を止めるのです 美しさに はっと 息を呑んだ瞬間 あなたは消えてしまうでしょうから しんと 凍えながら見…

まじわる

白い陶器のランプの水面に スポイトで ぽん と オイルを垂らします。 わたしのすきなかおり あなたのすきなかおり すべてが ぐちゃぐちゃになって まじわりはじめる 時間軸が蕩けはじめ 次元が 形而上の境界線が 夢が うつつが まじわる まじわって うつくし…

わたしたちは 木です 大地に根をはって エネルギーを吸いあげて ぐんぐんと 伸びてゆきます のどもとに ちいさな 花のつぼみ あわい いろの ぜらにゅうむの かほり そんな 吐息で 限りない愛情を つぎこんで 楽器に 息を入れてゆくのです たぷたぷと ゆれる…

あゆみ

すこしずつ あるいていくことの たいせつさ いっぽずつ その あしあとの いっぽ いっぽ ゆきのはらをふむ きゅっきゅっ しもばしらをふむ ぽりぽりしゃりん ふりかえってみたときのことなんか どうだっていいんだ いまは みえなくたって できることを やりつ…

くらやみ

レースのカーテンいちまいで だんだんに ひがくれるようすを ベッドのうえで じっとながめている ながめている というよりも つつまれている ひるは ひかりにつつまれて あたたかく あかるく ねむる よるは くらやみに つつまれて わたしはいま くらやみにつ…

寒さ

寒さに怯えて 毛皮を剥ぎ取り 生肉をはふる。 今朝も ベッドから出られないのです 太陽を待ち焦がれている人々が この地球の上に何人暮らしているのか ちっとも見当がつきません。 生きなくては。エゴであろうとも生きなくては。自分だけになったとしても生…

夜を 深める なにかを 司る老人が ランプを手に ゆっくり歩いて 少しずつ近づいて もうすぐ私の頭の上 夜は深まるばかりです 彼の不明瞭な徘徊は続く 光が見えませんね夜だから 明るくなどなりませんよ夜は 深まりが止まるのを待つのです 老人の歩みが止まる…

球体旅行

ゼリーのようにぷるぷるした球体に包まれて深い森の中をふわふわ浮いて進んでゆきたい痛くも痒くも無いバウンドしながら谷底まで落ちる目的地は無いから再びゆらゆらと漂うふかみどりことりこけむしたちのいとなみたおれたろうぼくやどりぎからす世界のすべ…

吐露

吐き出さなくては ことばを こころを 吐き出さなくては これまで 生きてこられなかった。 吐き出すことを恐れぬよう 白い息 吐き出し過ぎることを戒めるよう 赤い吐瀉物 吐き出す。 これからも吐き出す。 そうして、生きていく。

未来のこと

未来のことを 想像して 相談して 進めてゆけるのは とてつもないしあわせ。 私に未来なんてあると思っていたか? 好きな町で 好きなかたちで 好きなお茶を飲んで のんびり暮らしたい。 私に二度と楽器が持てるなんて思っていたか? 新しく 勉強をしよう。 そ…

孤独な男

焦点の定まらない、ぼやけた、 煙のような孤独を持つ男を 常に、孤独を抱え込み、吐露する男を きっと私は、救うことができない。 ただの、予感でしかないのだけれど。 さびしさ みなが心にもつ ふかい ふかい 底の見えない井戸 誰かと会い交わり別れる それ…

したたり落ちる

トマトの汁がしたたり落ちて シーツを汚した。 鮮やかに 自身の生を主張して。 したたり落ちる。 逆立ちになるヨガをしながら考える。 したたり落ちる。 布団に入り、腕と足に温かいと言い聞かせながら考える。 したたり落ちる。 血液。 鮮やかな赤。 赤黒さ…

かたち

かたちなどなくて てざわりだけ あるもの ふわふわと てんから おちてくるもの ホラおばさんが はねぶとんをはたいたよ その かけらだよ こなゆきの けっしょうがみえますね ろっかくけいの かたちなどなくて ゆらゆらと ゆれているもの むねのあたりから お…

和声

おと の かさなりは いろ で いろ の つらなりは え になる はてのない かべにむかって かまえる おおきなパレットを こわきに えのぐ のかずがもんだいではなく まぜあわせるのが とてつもなく たのしいのです むかしのひとも いまも わたしも

冬眠

からだが いうことをきいてくれなくて じっと よこになっているしかなくて なんども なんども ねてもねてもねむけがとれなくて からだに むりをさせない こきゅうにあわせて ゆっくりとせぼねをまげるように いまは ねむるとき (ほらあなのなかに たっぷりと…

残像

もしも シャッターのスピードを とても とても 遅くしたカメラが ずっと ここに座っていたのなら あの 小さな女の子は 私 音が 好きで 好きで 童謡のカセットテープで踊り出して 庭では 落ち葉と一緒にダンス ピアノから 一日たりとも離れなかった あの子は …

透明

わたし が 透明である とてもしずかに呼吸をして とけてゆく とろけてゆく うつつから ゆめへと

観測

自分の心を じょうずに観測すること 苛立ちを 恐れを 不安を 望遠鏡で あるいは 顕微鏡で 注意ぶかく 冷静に 観測すること

いちご

舌の奥に 喉に いつまでもとどまっている甘さを ねばりつく酸味を 官能的に 赤く 描けたらいいのに。