夢の話

内戦が始まっていた。
私は上下紺色のブレザーの制服で
クラスごとにちりぢりばらばらに逃げ惑った。
知らぬ間に知らない学校の人たちとも一緒になった。
そんなに動いていてはだめだよ、見つかるよ、と教えられて
じっと、石碑と石碑の列の間に伏せて、敵機が去るのを待った。


「こんな時だからこそ、本が必要なのよ。」
と、図書館司書はやさしく言った。
担任教師の元恋人であるらしく、
私たちを管理室にかくまってくれると約束した。
私は、妙に納得して、「ののはらの」何とかという、
福音館書店の絵本を小さくしたような、
そう、ピーターラビットの絵本のサイズの本を借りたのだ。
図書カードに、ふるえてうまく字が書けず、題名と名前がごっちゃになった。


しかし、管理室でほっと落ち着いたのも束の間、
狂った目をした迷彩服の男がマシンガンを構えて
扉を蹴破って入ってきたのだった。
図書館司書の夫は、狂信的な異教徒。つまり、敵であった。
クラスの多くは非常階段を異常なスピードで駆け降りて逃げ、
私は窓からなんとか壁をつたって降りようとつとめた。
夢の中であるから、落ちても痛くも痒くもなかった。


その後、どうなったのか、
内戦は終わったのか、
私は生き延びられたのか、
何もわからないまま、目覚めは訪れた。