残像

もしも
シャッターのスピードを
とても とても 遅くしたカメラが
ずっと ここに座っていたのなら


あの 小さな女の子は 私
音が 好きで 好きで
童謡のカセットテープで踊り出して
庭では 落ち葉と一緒にダンス


ピアノから
一日たりとも離れなかった
あの子は 私


動いている 軌跡が見えて
残像が 私をすりぬけてゆく
まるで
今 ここにいる 私が
透明であるかのように


小さな残像が いつまでも踊り続ける
私は心までも透明にされて ぴくりとも動けない