首が 欲しかったのだわ!
かん高く嗤い舞い上がるほど 欲しかったのだわ!


 わたくしは 17歳でした。


首が!
首が!
首が 欲しかったのだわ!


 官能的なフレーズとともに その夏は過ぎてゆきました。


首が!首が!首が!
血が!血が!血が!
唇が!唇が!唇が!


乱された黒髪 聖らかなもう開かぬ黒い瞳
銀の輝く皿に載って!
生臭くしたたって!
血のしずくが、したたり落ちて!


太鼓よ もっと鳴りなさい!
笛よ もっともっとかん高く歌いなさい!
私のために
私のために
ああ この この人の いえ この首の
この首のために
美しい音楽を 奏でなさい!
この首のために!
首のために!


ああ 愛している!
愛している!
愛していた!
いえ 愛している!愛している!愛している!


 わたくしは 何も 知りませんでした。


お前の首を愛するのだ。
これからずっと一緒にいられるのだ。
永遠にお前の首を愛するのだ。


私の無垢さ 私の無邪気さ 私の純粋を装った演技
女とは かくあるべき
おとうさま、ご存知でしたかしら?
ホホホホホ!
ホホホ!
ホホホホホホホホホ!


 わたくしは 何も 知らなかったわけではありませんでした。


周りなど何も見えません。
見えるはずがない!
首が!首が!首が!
愛する人の首が!首が!首が!
唇から垂れる赤黒い血さえもが!
ああ、この舌で舐め取ってやろう!
私のものになるのだ、永遠に!
聖らかなものは 淫らなものに 一瞬のうちに変化した。
変えたのだ!
この 私が!


聖らかな人を 淫らなモノに したのです!
ご覧の皆さん、
可笑しいでしょう!
愉快でしょう!
高く嗤い出してしまうわ!
ホホホホホ!
ホホホ!
ホホホホホホホホホ!


ああ 私には何だってできる!
愛するモノをこの手でつかんで
ああ この悦び!
首が 欲しかったのだわ!
ずっとずっと 欲しかったのだわ!


 わたくしの夏は 激しいリズムに乗って 過ぎてゆきました。


太鼓よ、もっと叩きなさい!
大きな音で!
かん高く 奏でなさい!
永遠に奏で続けなさい、この悦びを!
愛している!愛している!愛している!
愛の悦楽を!
罰せられてもかまうものか!
この 女の 本来の姿
女の 生まれ持った 愛の悦楽を!
私が手にしたこの悦楽を!
このモノを!
この首を!


欲しかったのだわ!
ずっとずっと 欲しかったのだわ!
この首が!
首が!
首が!
首が!