小さな官能

寂れた温泉宿の脱衣所で
小さな女の子が
無邪気に扇風機に向かって
躯を開いている。
雫は払われて飛び散り、
私は無言で髪を乾かす。


その
まだ熟れぬ桃のような
すべすべ生えた毛並みのような
内側からじゅくじゅくと産み出される
甘みのような


小さな官能を
私は、沈黙して鏡越しに見つめた。
桃は、息をひそめぬまま
大胆に寝転び寝巻きを着て、
暖簾の向こう側へ
消えた。


雫が、落ちている。
私は独りで
扇風機を強にして
思いきり躯を開いた。