2008-03-26から1日間の記事一覧

宴のあと

私は なぜ、踊ったのだろう 官能に惑わされて? 恋い焦がれ過ぎて? 私は なぜ、こんなものが欲しい などと乞い願ったのか 私は 狂ってしまった 既に、はるか遠くまで 狂ってしまった 高笑いをするしかないわ 狂ってしまったことを 誰にも喋らずに 今まで通…

地下室

螺旋階段をずうっと降りた 地下室に閉じ込められている あの方は、だあれ? お父様。 痩せこけた頬 伸びきった髪の毛と髭 躯は汚れて獣の臭いがする 足に掛けた鎖は、 外しては、あげられないのね? お父様。 あの方は、だあれ? お父様。 長い蝋燭を一本手…

ひらく

夜の闇が ぽっかりと ひらく そこだけが空虚であり虚無でありしかも真空であるかのような 強く 渦を巻く穴に 引き寄せられて じたばたと溺れそうになる 引力に逆らえず 夜の闇に さらわれてしまう、 私 が。

小さな官能

寂れた温泉宿の脱衣所で 小さな女の子が 無邪気に扇風機に向かって 躯を開いている。 雫は払われて飛び散り、 私は無言で髪を乾かす。 その まだ熟れぬ桃のような すべすべ生えた毛並みのような 内側からじゅくじゅくと産み出される 甘みのような 小さな官能…

北にある街で

厚く積もった雪は 泥を含んで融けかかり 日なたでは植物たちが 太陽へ手足を伸ばしている この街では 春の訪れも 少々、遅いのだ 雪の中から顔を出した ふきのとうを 味噌と和えたものを買った 馬は 蔵の街で馬車を牽きながら 白い息と気配を立てて ゆっくり…

手首の脈を深く切ると ほのかに あおじろく ひかる 血が、 ヨーグルトのようにもつれて 決壊し、流れ出す 舐めなさい。 しゃぶりつきなさい。 くちびるが どんな夜空の闇よりも 蒼く 染まり 唾液と混ざって ぬるぬると垂れて ギラギラと輝く くちびる! 美味…