川底から

私は、ひらかぬ貝になってひっそりと息をしずめていた。
時おりぷくぷくと、自らのあぶくが排出されていくのを、
見るのも、感じるのも、耐えられはしなかった。


ひらかぬ貝。
何も見えぬ生き物。
いや、既に生き物であることを放棄した、物。


水に流されて下降しながら、
小石と同化しつつ海へ向かいながら、
私は


ある日


ふと、まぶたをひらいたのだ。


見上げれば、光とともに、放流されたメダカたちが
銀色に、プリズムのように光って、
ゆらゆらと流れていった。
あっというまに。


私は、ひらかぬ貝だった。
だが、今はまた、生き物である。
今はまた。今もまだ。
今も、なお、生きている。