年をとったなあ、と思う。
男のいびきが、憎らしくも少しだけ愛らしい。
空がもうすぐ白くなって車たちが動き出すのに、
ここにはあたたかい時間がゆっくりと流れている。
このまま時を止めるには
命を絶つのが最適ではないか
という私の狂気
カーテン越しの朝日に照らされてゆく男の横顔は、彫刻のように美しい。長いまつげがぴんと跳ねる。
これは恋ではなくて
既に、家族愛ではないのか。
(いつか裏切ってしまうのではないかという私の恐怖、不安、そして狂気)
年をとってしまったなあ、と思う。
このまま年を重ねるのも悪くないのかな、とも、少しだけ思う。