かなしみ

もしも うたいつくしたら
磁石のように すうっと 離れてゆくでしょうか
遠ざかってゆく
斜面
いただき
雪の青白さ


鮮血の色を私は ずうっと 忘れているし
いつになったら すべては戻るのだろう
崩れ落ちたレンガ
赤い壁
足跡
それから


ふわんと 宙に浮いて
色とりどりの毛糸を垂らして
要るものと 要らないもの
白と黒に分けて


私はわかっていた
たしかに わかっていた
いつのまにか


あたまのなかみはこわれてしまった
あの駅で顔のない車掌がすべてを持ち去ってしまった
またたくまに


足音さえ聞こえない
しずかな しずかな雪の中で